消化管は、からだを貫通しているトンネルのようなもの。
口から入ったものは、「何事も起こらなければ」出口に直行します。
ただし、このトンネルの中には消化酵素がうじゃうじゃいます。消化酵素は、栄養素のつなぎ目を切るハサミです。カットされた栄養素は、専用のドアから吸収されていきます
「でんぷん」について考えてみましょう。
トンネルの中にはでんぷん担当の消化酵素もいるし、専用ドアも用意されています。
スパスパ切られて、からだ本体にスイスイ入っていくので、食事から摂ったでんぷんのほとんどは、トンネル出口にたどり着きません。
出口に直行するケースもあります。
たとえば、食物繊維。
食物繊維には、カットしてくれる消化酵素がいません。
食物繊維は基本的に糖の分子がつながって作られているので、でんぷんと似た構造です。
中でも、代表的な食物繊維である「セルロース」は、でんぷんとそっくりです。
これまではブドウ糖をキッチリした六角形で描いてきましたが、実際のブドウ糖はいびつで、上と下のかたちが微妙に異なる六角形です。
でんぷんは、すべてのブドウ糖が上下同じ向きにそろったつながりですが、セルロールは互い違いにつながっています。
たったそれだけの違いなのですが、セルロースをカットできる消化酵素は消化管の中に用意されていません。
そのため、セルロールは分解されないままトンネル内を進み、出口から吐き出されていきます。
ただ、ヒトのからだには何一つムダがないので、吐き出される食物繊維もキチンとお仕事をして行きます。
食物繊維は水の分子を引き寄せるので、適度に水分を含んで柔らかくふくらんだ便にします。
こうして便のサイズが大きくなると、腸の壁にいい感じに圧力がかかります。圧を感じた腸はイモムシのようにもぞもぞ動き、便を先へ先へと動かしてくれます。
食物繊維が足りないと、便は小さく硬くなり、動きが悪くなります。
これでは腸の中にたまりやすくなり、便秘につながるのです。
食物繊維の仲間には、腸の中で分解されやすいタイプもいます。
それについては、次回お話ししましょう。
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