消化はからだにとって、毎日繰り返される大きなイベントです。
その進行プロセスを見てみると、ドミノ倒しのように連続しておこる小さなイベントから成り立っていることが分かります。
消化がスムーズに進んでいる時には、ドミノ牌がパタパタパタと気持ちよく倒れるように一つ一つのステップがつながっていきます。そこで、全体を動かす重要な起点になっているのが、胃酸なのです。前回お話しした「タンパク質の変性(もつれた糸をほどく作業)」がドミノのピースの一つ目なら、二つ目のピースにあたるのは「ペプシン」です。
胃の上皮細胞の中にある、「壁細胞」については以前お話ししました。
その近くに、「主細胞」と呼ばれる細胞があります。
主細胞の中では「ペプシノーゲン」というタンパク質が作られ、胃の中に放出されます。
胃の中に飛び出したペプシノーゲンは微妙にかたちが変わり、「ペプシン」になります。この時に胃液に胃酸がたっぷり含まれていて強い酸性(pH2くらい)になっていた方が、勢いよくペプシンに変わります。胃酸が少ないと、ペプシンになれずに残るペプシノーゲンが増えてしまいます。
ペプシンは、タンパク質を消化してくれる消化酵素です。ペプシノーゲンには、この働きはありません。ペプシンに変わらないと、酵素として働けないということです。
胃液が強い酸性だと、ペプシンの活性も高まります。タンパク質をスパスパ切りまくるシャープなハサミになるのです。弱い酸性になると、カットするスピードが途端に落ちてしまいます。
まとめますと、胃酸がしっかり分泌されたどうかによって、タンパク質をカットするハサミ(ペプシン)の数が変わってきます。そのハサミも胃酸の具合によって、剪定ハサミの切れ味にもなるし、粘着テープを切ったあとのベタついた文具ハサミにもなるということです。
胃酸のドミノ倒しは、ここで終わりません。まだまだ続いていきますよ!
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