胃で働く消化酵素は酸性が好き。
小腸で働く消化酵素は中性が好き。
そこで、酸性から中性へのpHの切り替えが十二指腸で行われます。
前回はここまでお話ししました。今回はその続きです。
胃での消化が完了してお粥状になった食べ物が、十二指腸に入ってきます。胃酸まみれになっているので、強い酸性のお粥です。
十二指腸を拡大してみましょう。強酸性のお粥が入ってくると、その強烈な刺激に反応して、「セクレチン」と言うホルモンが分泌されます。
セクレチンは、胆のうとすい臓へ向かって走り、「重炭酸ナトリウムをどんどん作りなさい」とメッセージを伝えます。重炭酸ナトリウムは強いアルカリ性の分子です。
食べたものが胃から十二指腸に入ってくると、それを消化するために胆のうからは胆汁酸が、すい臓からは消化酵素が投入されます。この時に一緒に流れ込む液体は、セクレチンの指示によって重炭酸ナトリウムをどっさり含んでおり、強いアルカリ性になっています。
アルカリ性の液体が流れ込むことで、お粥にくっついていた胃酸が中和され、十二指腸内のpHは7近くまで高まります。これによって、すい臓系の消化酵素がもっとも活発に働くことのできる環境が整います。
食事からとった栄養素のほとんどは、小腸内で消化されます。速やかに消化を完了するためには、十二指腸でpHを適切に調節しておくことが大切になるのです。
胃酸の分泌量が少なかったケースを考えてみましょう。
十二指腸に入って来た「お粥」は、強酸状態ではなく弱い酸性になります。これでは、セクレチンが十分に分泌されません。十二指腸のpHは常にモニターされていて、「強い酸性」になった時に、中和目的でセクレチンが分泌される仕組みになっているからです。
セクレチンの分泌量が少ないと、胆のうとすい臓に対して、弱々しい指示出ししかできません。その結果、十二指腸に流れ込む液体は重炭酸ナトリウムが少なく、アルカリ度も弱いものになります。
本来なら十二指腸内でpHが7前後に調整されるはずなのですが、5~6くらいの中途半端な数値になってしまいます。これでは、消化酵素が十分に力を発揮しきれません。
「人は食べたものから作られている」と言われますが、実際には消化できて、吸収することのできた栄養素しか、からだを作る材料として役立てられません。こだわって食材を選ぶところで終わらずに、それを残らず消化し吸収するところまでケアする必要があります。
体内の消化酵素の活性には、ある程度自分でコントロールできる余地があります。なまくらなハサミにもできるし、栄養素を自在に切りまくる鋭利なハサミにすることもできるのです。
次回は、ここまでのお話を簡単にまとめてみましょう。
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